世間ではよく「イノベーションを起こす」と言われる。
多くの分野で、このイノベーションを起こそうと日夜努力している。
しかし実際はそんな簡単にイノベーションというのは起きません。
実は大きな組織や企業になるほど難しくなります。
今回は「なぜ組織でイノベーションは起きにくいのか」ということと、その解決方法を解説していきたいと思います。
参考にする本の紹介
今回紹介するのはクレイトン・クリステンセンさんの書かれた『イノベーションのジレンマ』です。
クレイトン・M・クリステンセン
ハーバード・ビジネス・スクール教授。
【本書の内容】
「偉大な企業はすべてを正しく行うことで失敗する」という現象を見つけ出し、その原因と解決策を提示した本。
なぜ組織でイノベーションが起きにくいのか
ではここからは、大きな組織でイノベーションが起きにくい理由を参考例なども挙げながら解説していきます。
破壊的イノベーションとはなにか
まずは、イノベーションがどのようなものかを紹介します。
本書ではイノベーションには2つあると語られています。
【予備知識】
本書では「破壊的イノベーション(破壊的技術)」と「持続的イノベーション(持続的技術)」という言葉が登場します。
このうちの「破壊的イノベーション(破壊的技術)」が大企業を失敗に導くという。
「そんなこと宗教には関係ないんじゃない?」と思われる方もあるかと思うかもしれませんが、これは僕たちも知っておいて損はないことです。
まずはバイクが有名なホンダが北米で50㏄バイクを持ち込んだ、破壊的イノベーションを例にしてみていきましょう。
ホンダのイノベーション成功例
まずイノベーションの成功例というものが、どんなものなのかを知ってもらうために、ホンダがアメリカで成功した例を紹介します。
ホンダの成功例
- ホンダは北米にオートバイを輸出したいと考えていたが、当時日本で大人気だった「スーパーカブ」のような市場は北米にはないと調査の結果、判断した。
- ホンダの技術者は北米専用の馬力のあるオートバイを設計し、ロサンゼルスに3人の人を送り込み、販売開始。
- 全然売れないので、持ってきたスーパーカブで気晴らしにツーリング。
- 人々が「それ、どこで買えるの」と尋ねてくるようになる。
- はじめは目もくれなかったが、そのうちに「あれ、小型のバイクって売れるんじゃない?」
- 日本陣営から様々な議論や圧力があったが、ロサンゼルスチームが説得し小型バイクを売るという別のチャンスに賭けた。
- 50㏄バイクは製品の品質を高め、価格を引き下げながら徐々に生産量を拡大。
(参考:クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』翔泳社 206~208頁)
ホンダの50㏄のバイクは、北米市場では破壊的技術となりました。
しかしこんな市場が眠っていたということは、売ったホンダすら分かっていなかったようです。
おもしろいことに、ホンダは、北米のオートバイの潜在市場がどのような市場かを正確に予想できなかったばかりでなく、潜在市場の規模も正確に予想できなかった。
(クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』翔泳社 209頁)
破壊的なイノベーションというのは、予想ができない。
ここに大きなジレンマが生まれるのです。
補足説明を「サラタメさん」の動画で見てください
もう少し補足で説明したいのですが、先で書く「イノベーションを起こすにはどうしたらいいのか」に注力したいので、ここでは割愛します。
かわりに『イノベーションのジレンマ』を分かりやすく解説しているオススメの動画を紹介します。サラタメさんというビジネス系ユーチューバーです。
この動画が最高に分かりやすい。
むしろこれさえ見てもらったら、要点はだいたい分かります。
ということで僕は宗教でも取り入れられそうなところだけを書いていきます。
破壊的イノベーションの5つの原則のうち2つを解説
本書『イノベーションのジレンマ』には、破壊的イノベーションに出会った時の、少ない成功事例と多くの失敗事例から導きだした「イノベーションの5つの原則」が紹介されています。
そのうち教会やお寺でも大事だと思った原則を2つ引用します。
一、資源の依存。優良企業の資源配分のパターンは、実質的に、顧客が支配している。
二、破壊的技術の最終的な用途は事前には分からない。失敗は成功への一歩である。
(クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』翔泳社 144頁)
この2つが特に教会やお寺のイノベーションを難しくしていると感じます。
教会やお寺に合せて簡単にいうと
- 信者さんや檀家さんに「お供え」という形で教会やお寺でかかるお金を払ってもらっている。
そのため、信者さんが価値を感じないことは実行にうつせない。 - 人のためになりそうなことや、教会の発展につながりそうなことは、事前には分からない。
ということになるかと思います。
いまいち分からないと思うので、例を出しながら説明していきます。
お菓子配りを止められたお坊さん
これは知り合いの住職に聞いた話です。
とあるお寺でお供えに上がったお菓子があったので、それを近所の子どもたちに配ろうと住職が考えたそうです。
しかし配り始めると、ある檀家さんから「私たちがお供えしたお菓子を、なんの関係もない子どもたちに配るとはどういうことなのか」と質問がきたということでした。
檀家さんも大切な存在ですし、近所の方とのつながりも大事にしたい。
そう思うと、どうしていいか分からなくなったとその住職は言っていました。
個人的にはとてもいい取り組みだなと思うのですが、確かに檀家さんのいうことも分からなくないなとも思うのです。
断っておきますが、これは住職が悪いとか檀家さんが悪いという話ではありません。
イノベーションは予想することが難しいので、はじめはどうしても理解しづらいのです。
住職としても説明したいが「なんとなくいいような気がする」というような説明しかできず、形にするまではお互いに辛いものがあります。
それがイノベーションのジレンマなのです。
では、どうすればいいか。ここらはイノベーションを起こすための3つのポイントを解説していきます。
教会やお寺でイノベーションを起こすための3つのポイント
こちらも『イノベーションのジレンマ』から、先ほど2つだけ紹介した「イノベーションの5つの原則」を実際にどのように役立てたのかがこちらも5つ書いてあります。
以下、そのうちの2つを引用します。5つのうちの2、3番目です。
二、破壊的技術を開発するプロジェクトを、小さな機械や小さな勝利にも前向きになれる小さな組織に任せた。
三、破壊的技術の市場を探る過程で、失敗を早い段階にわずかな犠牲で留めるよう計画を立てた。市場は、試行錯誤の繰り返しのなかで形成されていくものであると知っていた。
(クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』翔泳社 145頁)
これをまきのりがざっくり言わせてもらうとこういうことになります。
- 組織のなかに小さな海賊団を作る。
- まずは小さく始める。
- 個人としての別の収入源を得る。
この3つが宗教の組織でイノベーションを起こすのに大事だと思っています。
組織のなかに小さな海賊団を作る
僕が所属する親教会での青年部の活動は、信者さんの多くが応援してくれるので、けっこう新しい活動ができます。
しかもある程度は「好き勝手やっていい」というスタンスなので、教会としてはできないことも案外やってみることができます。
世界を変えるのは「若者・バカ者・よそ者」だとよく言われます。
そのため若者が集まった青年部ではイノベーションが起きやすいと個人的にも感じます。
このような教会・お寺から独立した小さな組織をつくることが「小さな海賊団を作る」ことです。
山口周さんが今を生きる教養人にインタビューをしている『思考のコンパス』という本のなかでは、このような話が語られています。
会社も同じで、何に関係するかまったくわからないことばかりやっていたら倒産します。
でも短期的な利益に結びつくことだけでなく、遊びや余白を残しておかなければ、長期的には衰退してしまいます。
(山口周『思考のコンパス』PHPビジネス新書 146頁 生命学者 高橋 祥子さんとの対談より)
つまり長期的に考えると、遊びや余白のある「小さな海賊団」が必要だといえます。
実際にうちの青年部でも小さなイノベーションが起きています。
たとえばZOOMの導入などがそうです。
今までの親教会の体制では、よく意味の分からないZOOMというものは、反対意見も多くてすぐには導入できません。
しかし青年部ではわりと簡単に導入できます。
というか、コロナ禍以前から使用していました。
気になる方は別の記事にまとめたのでそちらをご覧ください。
青年部が使いはじめて1年くらいたった頃、親教会の役員会でも使ってみたいという声があり、そちらでもすぐに導入をすることができました。
こうした青年部という小さな海賊団を組織の内部に持つことで、多少寄り道をしている組織に思えますが、その方がイノベーションが起きやすいなと個人的にも実感しています。
まずは小さく始める
先ほど紹介したホンダの件もそうですが、まずは小さく始めるというのが鉄則です。
ホンダがアメリカの調査と販売に送り込んだメンバーは始め3人です。1番初めから100人の人間を送り込むようなことはしません。
実際にうちの青年部も、何か新しいことに挑戦するときは「小さく始める」ことを意識しています。
たとえば「青年部のホームページを作りたい」という声が上がった時も、いきなり有料のものを試すのではなく、まずは無料のものを使ってみようという具合です。
今のところ、無料のもので事足りているので、そちらを使っています。
ちなみに僕たちは「ペライチ」というサービスを使っています。
個人としての別の収入源を得る
3番目の「個人としての別の収入源を得る」は、『イノベーションのジレンマ』には書かれていません。
しかし信者さんからいただくお布施や、お供えはイノベーションに使うのには難しいと思います。
教会やお寺の規模にもよりますが、小さな教会やお寺は、もう自分で稼いだ方がいいのかなと思っています。
僕は、自分の受け持つ教会に関しては、新しいことは自分のやりたいことでもあるから、お供えに依存しないようにしています。
まとめ
さて今回はクレイトン・クリステンセンさんおの書かれた『イノベーションのジレンマ』を参考に「教会組織でイノベーションが起こす3つのポイント」を解説していきました。
【イノベーションの意味】
「イノベーション」とは、組織、ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値を生み出し、社会にインパクトのある革新や刷新、変革をもたらすことを意味する。
破壊的イノベーションの5つの原則のうち2つを解説
- 信者さんや檀家さんに「お布施」「お供え」という形で教会やお寺でかかるお金を払ってもらっている。
そのため、信者さんが価値を感じないことは実行にうつせない。 - 人のためになりそうなことは事前には分からない。
教会やお寺でイノベーションを起こすための3つのポイント
- 組織のなかに小さな海賊団を作る。
- まずは小さく始める。
- 個人としての別の収入源を得る。
今回参考にした本です。
よかったら手に取ってみてください。
以上、「【教会やお寺のトップにオススメ】教会組織でイノベーションが起こす3つのポイント」という話でした。
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