教会に経営学は必要ないのか
僕自身言われたことはありませんが、「教会に経営学は不要」ということを何となく思っている人は多い。
皆さんはどうでしょうか。
この言葉は半分正解で、半分違うんじゃないかと。
たしかに信仰を培うときに、経営というものが絡むと気持ちよく信仰できないような気がします。
お布施がノルマになっていたり、月に何名信者を入会させなければならいというようなことが強制されていたとしたら、僕の場合、すんごいやる気が無くなるので。
あくまでも信仰は自分の主体性で進んでいってほしいと思うのです。
とはいえ、教会(お寺)の代表者だとか信仰組織のトップだとかいう人には、どうしても経営者としての目線が必要になるんじゃないかなと思います。
僕が知る上手くいっている教会は、その辺のバランス感覚がすごくいい。
例えば兄弟で教会を切り盛りしていて、兄が教会の代表。弟が経営者として教会を支える。といった形をとっています。
個人的な理想でいえばこうやって分けちゃうのが理想だが、いかんせん全部の教会や組織がそんな都合よく人材がいるわけではありません。
ならどうするか。
1人2役が今のところの僕の結論です。
そのあたりは次の章で詳しく説明します。
経営にはミッションがめちゃ大事
今回は、信仰者の皆さんとドラッカーの『非営利組織の経営』を元に、経営のことを学ぼうと思います。
この本で再三ドラッカーが言っているのは、「非営利組織はミッションめちゃ大事やで」ということだ。まぁ営利団体でも大事なんだけど、特に非営利組織は大事なんだと。
理由はこれだ。以下、引用すると
非営利組織の強みは、報酬のためでなく大義のために働くところにある。それだけに、組織の側に情熱の火を燃え続けさせる責任がある。(中略)
ミッションを感じることこそが非営利組織の活力の源泉である。
(『非営利組織の経営』P・Fドラッカー168~169頁)
これを教会というものに置き換えて簡単にいうと、
教会は信者さんにお金を払って何かをしてもらうわけじゃなくて、大きな目標にむかって動いてもらうということが強み。
だからその大きな目標をどこに置くかというミッションこそが、教会が動いていくうえでガソリンの役割を果たす。っていうことかと。
そのくらい重要なことなので、ドラッカーは本書の第1章のはじめでもこう言っています。
非営利組織とは人と社会を変える存在である。
したがって考えるべきは、いかなるミッションが有効であっていかなるミッションが無効であるかである。そしてミッションは何かである。(中略)
重要なのはカリスマせいではない。ミッションである。
したがってリーダーが初めに行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである。(『非営利組織の経営』P・Fドラッカー2~3頁)
この言葉をひと言でまとめると
「つべこべ言わず、とにかくミッション考えろ」ってことです。(たぶん)
でもミッションを考えろって言われても、結構これが難しい。
本書ではミッションを考える上での説明や例が数多くでてくるので、是非とも参考にしてください。
ここではミッションを決める上での三本柱を紹介するに留めます。以下引用です。
第一に問うべきは、機会は何か、ニーズは何かである。
第二に問うべきは、それはわれわれ向きの機会かである。われわれならばよい仕事ができるかである。(中略)
第三に問うべきは、心底価値を信じているかである。(中略)
非営利組織には、機会、卓越性、コミットメントの三本柱が不可欠である。(『非営利組織の経営』P・Fドラッカー8頁)
おわかりいただでしょうか。
正直、僕はこれだけでは分からない。
そんな僕のような人のために、ここからは参考までに実際にある組織のミッションを3つ紹介します(営利組織含む)。
別の書籍から引用しているため、上記の三つの柱を含んでいるかどうかは疑問がありますが、どれもすばらしいミッションであることには変わりありません。
具体的な3つの組織のミッション
築地本願寺のミッション
築地本願寺というお寺をご存じでしょうか。
ガイアの夜明けでも特集されたことがあるので、知っている方も多いかと。
築地本願寺は浄土真宗本願寺の直轄寺院です。
このお寺が今、注目を集めている。
ビジネスマンから転職した住職が築地本願寺にイノベーションを起こしている真っ只中で、今までの常識に囚われない数々の行動を起こしている。
詳しくは『築地本願寺の経営学』を読んでください。
その中でおそらく築地本願寺のミッションと思われる一文が登場する。以下、引用です。
その役割は本願寺派全体の伝道布教改革の首都圏における先導者となることです。(『築地本願寺の経営学』(56頁))
この後にはさらに具体的な目標を3つ定めて、必要の無いことをやめたり、新たな活動を展開する様子が書かれています。
これについては別の機会に書きたいと思っています。
ソニーのミッション
『ビジョナリー・カンパニー』という本の中では、本当に卓越した企業の「基本理念」が紹介されています。
ミッションという言葉ではないが、基本的な価値観と目的を設定することの大切さを説いているのです。
「基本理念」と「ミッション」は多少意味が違ってくるのかもしれないが、だいたい合ってるんじゃないかと思う。
この本も分厚くて読むの結構大変だけど、長く愛されている会社の基本理念がたくさん出て来るので、興味のある方はぜひ読んでください。
今回はその中で登場する、ソニーの基本理念を紹介します。以下、引用です。
会社創立の目的
・技術者たちが技術することに喜びを感じ、その社会的使命を自覚して思いきり働ける職場をこしらえる。・日本再建、文化向上に対する技術面清算面よりの活発なる活動。
・非常に進歩したる技術の国民生活への即時応用。
(『ビジョナリーカンパニー』ジム・コリンズ ジェリー・ポラス(82頁))
スターバックスのミッション
最後にみんな大好きスターバックスのミッションを見ていこう。
スターバックスには5つのミッションがあるのですが、それより基本理念のほうがドラッカーのいうミッションに近い気がするので、そちらを紹介します。
スターバックスのコア・イデオロギー(基本理念)は「お客様に感動経験を提供して、人々の日常に潤いを与える」です。
この言葉には、コーヒーという単語は出てきません。
おいしいコーヒーを提供するのは大前提ですが、それは手段であり、お客様に感動してもらうのが目的なのです。
(『スターバックスの教え 感動体験でお客様の心をギュッとつかむ!』目黒勝道 22~23頁)
スターバックスではコーヒーを通じて人を喜ばせることを重視している。
今、3つ見てきたようにミッション(使命)が明確に決まっている企業は、目標が達成され、成果が得られる場合が多いようです。
教会やお寺の代表者の皆さんも、一度ミッションについて考えてみてはどうでしょうか。
では最後にのきまき的視点を紹介します。
のりまき的視点 ~自分自身のミッションは何か~
これは本書を読んでグッときたポイントでもあるのだが、「自分が何によって覚えらえれたいかをハッキリさせる」ということだ。ここでも引用する。
ミッションこそ重要である。
組織として人として、何をもって覚えられたいか。ミッションとは、今日を超越したものでありながら、今日を導き今日を教えてくれるものである。
(『非営利組織の経営』P・Fドラッカー157頁)
この言葉が本書の中で1番グッときた。
これは組織のみならず、読者1人ひとりにも突きつけられている言葉だと思います。
「この人生を通じて、自分は何によって人に覚えられたいか」この問いによって、自分の人生をもう1度深く考えなおすことができました。
ドラッカー自身も子どもの頃、「何によって覚えられたいか」という問いを宗教の先生から投げかけられ、「今は答えられないだろうが、50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ」と言われたのだとか。
自分は30代前半だが、この問いに答えられませんでした。
そして本当にやりたいこと、人に覚えられたいことを考えた結果、やめるべきことを少しずつですが見つけつつあります。
僕は教会の代表者だが、それだけでは暮らしていくことができないので、アルバイトをしています。
このアルバイト自体はやめることができないが、せめて「自分が何をもって覚えられたいか」に合うような職業に変えようと決意したのです。
今のバイト先の時給はいい。
けれどそれよりも「カッコいい、周囲の人に安心を届けられる信仰者」として覚えてもらいたい。そう思って、前の職を辞めた。
50歳になった時、もしドラッカーに会えたら自信をもって言えるように。
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