そんなビジネスみたいなこと、宗教に必要なの?
マーケティングと聞くと、教会やお寺には縁もゆかりもない言葉のように聞こえます。
僕自身もすこし前までは、そう思っていました。
けれど、いろいろと勉強するうちに「マーケティングって今の教会やお寺にこそ必要なんじゃないか」と思ったのです。
まずその理由を2つ紹介します。
- 教会やお寺には達成したい目的があるから
- けれど資源は年々不足状態にあるから
これだけでは「ん?」と思われる方ばかりだと思うので、ここから僕自身の体験をふまえて説明していきます。
進む方向を見失った教会はどうなるのか
まずは、自分自身が所属する教会を例に説明していきます。
といっても僕が代表となって運営している教会ではなく、親会社にあたる「親教会」とでも呼ぶべき教会の話です。
僕が代表をつとめる教会は、状況が大変すぎて逆に参考になりません(笑)
ある日、親教会の会長さんが信者さんの代表を集めて言いました。
僕の中では、超衝撃が走りました。「それ、大丈夫か」と。
寄贈していただくことは、非常にありがたいことですし、喜ばしいことです。
しかし、これからの教会のことを考えた時に、その建物を管理しきれるのかが非常に疑問でした。
教会に参拝する人の数も減り、現在ある建物を管理するだけでも大変なのに、さらに新しい建物が増えたとき、「周囲の草刈りは誰がするのか」「維持管理費は払えるのか」といった問題が出てきます。
これでは、今ある資産をその建物の維持に使うことになり、教会として今よりも余計に苦しくなるだけです。
さらに、その建物を「何のために譲ってもらうのか」という目的がまったくなく、ただ「何かに役立ててほしい」という相手の理由だけで譲り受けることになっていたのです。
親教会の代表の方も、熱心に信仰されている素晴らしい方なのですが、このようなケースの判断に関しては、個人的には冷や汗をかきました。
ひとりの信仰者として、「周囲から与わってきたものを喜ぶ」という考え方は素晴らしいと思います。
しかし教会を運営していくとなると、信仰とは別の技術が必要になると痛感します。
結局、二転三転して、この話はなかったことになったのですが、マーケティングを知っていると、このようなときに「どういう判断をすればいいか」が分かるようになります。
次章では、まず参考にする本について紹介していきたいと思います。
参考にする本をざっくりと紹介
今回は森岡毅さんが書かれた『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』という本を参考に話していきます。
森岡 毅(もりおか つよし)
1972年、福岡県生まれ。
神戸大学経営学部卒業。
96年にP&Gに入社。北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパンブランドマネージャー副代表等をつとめる。
2010年USJ入社。革新的なアイデアを次々と投入し、窮地にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させる。
まぁそもそも経営状況が悪かったことを知らなかったけど。
本書の内容
森岡さんが、USJを復活させるために「マーケティング」という考え方を実践した軌跡を辿っている。
マーケティングとは「売るのではなく、売れる仕組みをつくることを常に考ること」だ。
本書では実際にどのような具体的な施策をとったのかという例を出しながら、ドラマのような形式で、USJが復活させたのかが語られている。
本書は森岡さんが「高校生の娘にも分かるように」書かれたこともあって、非常にかんたんな言葉でマーケティングが理解できるようになっています。
そのため、マーケティングのことを何もしらない僕でも分かりやすくマーケティングの全貌を掴むことができました。
あと、なんというかマーケティングというがっつりビジネスの話をされているのですが、僕は森岡さんの人柄に惹かれました。
ビジネス的な冷たさはなく、情熱とユーモアがたっぷり含まれていたからです。
ぜひ皆さんも本書を手に取ってみてください。
ここからはそんな本書の中で、僕が一番グッときたポイントを紹介していきます。
これから教会を運営していく中で、非常に大切になってくる「戦略(マーケティング)」という考え方です。
まきのりのグッときたポイント
戦略とマーケティングの違い
さて、それではマーケティングの話に入っていきたいと思いますが、その前にまず断っておきたいことがあります。
マーケティングについて話すと言いましたが、今回はマーケティングよりも一つ大きな枠組みの話をします。
それは「戦略」という考え方で、「マーケティング」よりも一つ大きな広さをもつ考え方です。
この「戦略」という考え方、つまり「戦略的思考」が教会をする時にめちゃくちゃ大事だと思ったので、今回は『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』から「戦略的思考」の部分を参考に語っていきます。
なぜ、「マーケティング(戦略的思考)」が必要なのか
なぜ教会運営にマーケティング(戦略的思考)が必要なのかが分かる部分を引用します。
本書では、会社組織の話として紹介されていますが、そっくりそのまま教会やお寺にも同じことが言えると思います。
会社の限られた経営資源(カネ、ヒト、モノ、情報、時間、ブランド資産など)を、経営者や技術者や作り手のエゴにではなく、消費者価値を大きく向上させるものだけに効率よく投資しないと生き残れない時代がやってきました。
森岡毅『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』角川書店 58頁
これを宗教にあてはめて考えると
信者さんや周囲の人にとって本当に必要な価値あるものに絞って、教会の資源を使っていく。そうでないと、徐々に減りつつある資源の中では活路が見いだせない。
ということではないでしょうか。
そして活路を見いだすために必要なもの。それが「マーケティング」であり「戦略」なのです。
戦略について、より詳しく
ここからはさらに詳しくなぜ戦略について考えていきます。
戦略とはもともとは戦争から生まれた考え方です。
このことは別の記事で紹介しているので、よければそちらも参考にしてください。
著者の森岡さんは戦略を以下のように説明しています。
「戦略とは、何か達成したい目的を叶えるために、自分のもっている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと」
森岡毅『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』角川書店 97頁
戦略が必要な理由
- 達成したい目標を叶えるため
- 限りある資源を集中して投入するため
この2つの理由を教会という組織で考える時、まず「達成したい目標」というのは決まっているのではないでしょうか。それは、各宗派や宗教によって違うので、ここれは割愛します。
初めに紹介したうちの親教会も、この目標の部分を見失っていることが、判断の軸がぶれている原因の1つだと思います。
ここに関しても過去に書いた記事があるので、興味がある人はご覧ください。
今回一番伝えたいのは「教会運営になぜマーケティングが必要なのか」の肝になるのはもう1つのほう。「限りある資源を集中して投入するため」だということです。
実際にうちの宗教は多くの教会が、右肩下がりで悩んでいます。
それなのに今までやってきたことを、繰り返している。
これでは資源が減ってきた今、とてもじゃないが活路は見いだせません。
「現状を把握して、本当に価値あるものにポイントを絞って資源を投入していく」という考え方の大切さを、この記事で伝えたいのです。
そうでないと、うちの教会のようにせっかくある資源を、逆にぼんやりと引き延ばしてしまってもんじゃ焼きのような状態になっていまいます。
まとめ
今回はなぜ教会運営にマーケティングが必要なのか話しました。
僕が所属する親教会の話をしたあと、マーケティングを知らないと判断の軸がなくなるという話を紹介していくという流れでした。
以下は、今回紹介した『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』の内容をまとめです。
「戦略」と「マーケティング」の違い
「戦略」は「マーケティング」より広い考え方
森林にたとえると「戦略」が林、「マーケティング」は木にあたる。
なぜ教会に「戦略的思考(マーケティング)」が必要なのか
信者さんや周囲の人にとって本当に必要な価値あるものに絞って、教会の資源を使っていく。そうでないと、徐々に減りつつある資源の中では活路が見いだせないから。
では今回はここまで。
以上、「【教会やお寺のリーダー必見】なぜ教会運営にマーケティングが必要なのか」という話でした。
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