【信仰エッセイ】樹上で聞こえる声から僕が学んだこと

ぼくは教会を運営するかたわら、林業もしている。
つまり2足の草鞋を履いているのだ。

ある日、そんな林業で特殊な仕事が舞いこんできた。

「保育園にはえている大きな木の枝を取りはらう」という仕事だ。
どうやら、木が生い茂りすぎて、園内にある広場に光が入らなくなっているらしい。

しかし、保育園の建物に近いため、すぐに根本から切るわけにもいかない。とりあえず枝だけでも取り払ってほしいという依頼だった。

僕自身はそんな技術はないが、親方は特殊な伐採作業にも精通しているため、依頼を受けたそうだ。
そして僕もサポートとして行くことになった。

仕事当日、到着するとすでに近所に住む村の人が5人ほど待っておられた。

どうやら、休日のため、珍しい作業を見学したい気持ち半分、ボランティア半分で来てくださったようだ。

危険な作業なので、出来る範囲で手伝ってもらうことをお願いする。

最終的には、樹上で取り払って降りてきた枝を処理してくれることになった。

うわ~人がいると緊張するな~と思いながら、親方と支度をする。

その時、親方から無線マイク付きのヘルメットを渡された。

親方が木の上に登り、声が届かなくなるため、この無線を使って仕事をするのだ。

うちの親方は、樹上での作業のため、集まった皆さんへのあいさつもそこそこに木に登って行った。

すると、まあ地上にいて、この作業の指示ができるのは僕一人ということになってしまった。

集まった村の人たちと共に「園内に光が入るように、枝を取り除く」というミッションがスタートした。

仕事が始まると、親方が上からいろいろな支持をしてくれる。

その指示を片耳で聞きながら、もう片方の耳で村の方ともコミュニケーションを取り、作業を進めていく。

親方からの指示は、基本的には僕に対してのものだが、中には村の方への指示もある。

その時、親方の言う事をそのまま伝えるだけでは、ダメなことがある。
大きく分けると2つのパターンがある。

1つ目は、指示のなかに「専門用語」が入っている時だ。

例えばこんな場面があった。

樹上の親方から「まきのり、下にあるポータラップとリギングロープを皆さんに運んでもらって。」と指示がある。

もし僕がこの指示を繰り返し、村の方に伝えるとしよう。

するとおそらくこう言われるだろう。

村の人
は?

そうだ、こういう「専門用語」は僕の頭のなかで変換して、村のかたに分かるように伝えなければならない。

「すみません、そこの鉄製のおもしろい形したやつと、赤いロープが入ったバックを運んでもらえませんか」

と、伝わる言葉で言う必要がある。

もう1つは、指示が抽象的な場合だ。

例えば、親方から「まきのり、保育園北側の片づけを村の方たちにお願いしてもらえる?」という指示がある。

「片付け」というのは抽象的だ。僕はふだん一緒に仕事をしているから、それがどういうことなのかが大体わかる。が、それも先ほど同様、そのまま伝えると

「いや、具体的になにすればいいのよ?」

となるのは当然だろう。

そんな時は、やはり僕が「すみません、使わなくなった道具類を、トイレ前の空いたスペース間まで運んでもらえませんか?」などと具体的に言う必要がある。

そんなことを1日続けているうちに、ふと気がついたことがある。

「いやこれ、なんか教会でしてることと一緒やな」と。

ぼくはいつも、神さまのことを学び、そして神さまのそばで働いている。
そんなかなり神ってる生活をしている。

「園内に光が差すように枝を取り払う」という叶えたい願いが人間にあるように、神さまにも叶えたい願いがある。

ぼくは神さまの願いを、ある程度知っていて、それが実現するようそれなりに努力する。

いわゆる、片耳が天空の神さまと無線でつながってる状態といえる。

そしてそれを、信者さんや周囲の人にお伝えするというのが、役目だ。(これが全てではないが)

しかし、神さまの言葉は、昔の言葉で語られていたり、時に「専門用語」を含むときがある。

そんな時は、その指示を片耳で聞きながらも、自分の頭で考えて自己流にアレンジして、みんなに伝わるようにしなければいけない。

また、教えが抽象的なこともある。

そんな時も同様に、具体例などを挙げながら説明する必要があるのだ。

そう考えると、今回の作業がすごく面白くなった。(親方は神ではないが)

さて、そういう中継役をする時に大切だと思うことが3つある。

  1. 専門用語など、使われる言葉の意味を理解しておくこと
  2. 神さま(親方)の考えを知り、抽象的なことでも具体的に説明できること
  3. 神さま(親方)の声と村の人(信者さん)の声、どちらの声も聞こえるようにしておくこと

これは全て、教会での生活にも当てはめることができる。

是非とも今後の信仰生活にも役立てていきたいと思った一日だった。

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